2012年05月25日

オランジュの古代ローマ劇場 #02                 オランジュ/フランス


上部よりステージと半円形の客席を見る


客席はステージやその前のオーケストラピット等を中心として、半円形に広がってゆく純粋な
幾何学形態をしている。それはあたかも水滴が水面に同心円形の輪を作り、どこまでも広がっ
てゆくような、無限の広がりや繁栄のような、発展してゆく様を連想させる形状である。

その半円形をした客席を真正面から受け止めるかのように、巨大な壁面が力強く立ちはだかっ
ている。

この力強いステージ正面の構成(デザイン)をただ見ているだけでも、人間の心を高揚させる力
をそもそも秘めているかのようである。

古代ローマ人は、人間の心の奥底に誰もが持っているような感情に訴えかける術を、既に紀元
前頃には知っていたのではあるまいか。更に言えば、我々現代人の感情の琴線のようなものも、
その当時の人々とそう変わってはいないのであろう。

その彼ら古代ローマ人の造るものは、どこか、人間をはるかに超越したような視点を感じる。そ
れはスケールの大きさや、合理的で理性的にも見える全体の構成やデザイン、そして、曖昧さ
や迷いのようなものが全く入り込む余地の無い、純粋な円形などの幾何学形態の大胆かつ効
果的な使用等を見ての事である。

迷いなき人間の理想世界のようなものを連想させるのである。したがって見ていて、晴々しい気
持ちになり、自然と元気をもらうのである。私はこの様な感情を上手く表現できないので、「人間
賛歌」と、とりあえず呼んだりしている。

以下に基本を確認しておく。

オランジュの劇場 Theatre,Orange.
ローマの劇場はギリシアの劇場にくらべて、舞台が大きく、背景に永久建築が建てられる。
オルケストラは半円形の平土間にかわり、貴顕の観覧席となる。半円形に配置された観客
席は、かならずしも自然の地形によらず、ヴォールトなどを駆使して築きあげられる。南フラ
ンスのオランジュにあるこの劇場は上記の特徴をよくそなえ、かつ、ひじょうに保存が良い、
典型的なローマ劇場である。約千人の観客を収容できた。後50年ごろ。
出典:西洋建築史図集 彰国社


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2012年05月18日

オランジュの古代ローマ劇場 #01                 オランジュ/フランス


客席よりステージ正面を見る


この円形劇場も一目見たら忘れられない力(魅力)を持っている。
それは特にこのステージ正面の雄姿であろう。

野外円形劇場の多くは、遺跡となっている現在では、ステージ正面は無いものもあれば、
在ったとしてもその大半が既に崩れかけているのもがほとんどである。その当時は、ステ
ージ正面は石造や木造等で造られていたと思われるが、現在まで残っているものは、少
ないということであろう。

それが、ここオランジュの劇場ではその雄姿を見せてくれているのである。 ( 因みにここ
は世界遺産でもあるらしい。) そして、古代ローマ遺跡特有のあの壮大で、明快なデザ
イン性を遺憾なく発揮しているのである。

ここもまた、あの古き良き、古代ローマ遺跡の雰囲気を味わうことができる。


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2012年05月10日

古典建築探訪_玉林院 #03 霞床の席                  大徳寺/京都


間口一間の床と違い棚を見る


3畳中板の簑庵(さあん)の小間に対して、霞(かすみ)床の席は4畳半であり、席のつくられ方
から広間としての性格を持つ。真行草でいえば、簑庵は草で、霞床の席は行といった設定となっ
ている。

この2席は一対として考えるべきものであろう。正確には位牌堂である南明庵に付随する形で、
簑庵と霞床の席、そして水屋が設けられていて、その全体は法要に伴う茶事が可能な施設とし
て計画されたようである(寛保年間1741〜1743)。

簑庵でのいわゆる正式な侘び茶に対して、霞床の席の4畳半は、それよりかはくつろいだ雰囲
気での茶事にも対応できる空間となっている。明るく、華やかで、客人に少々の驚きと、ここでし
か見ることのできない貴重で、ありがたい気持ちにさせる仕掛けが用意されている。

それがこの、床に富士山の軸を掛けると、富士に霞みがかかっている様に見えるこの違い棚で
ある。大変な名工の技を必要とするであろうとも思われ、めったに他では見ることのできない貴
重なものを、この目で見ることができたと、ありがたい気持ちにさせるのである。席の呼び名もこ
の事からきている。

ありがたい様な、めでたい様な気持になるのは、もう一方では、富士山の力もあるだろう。

この施設の計画の際、表千家七代如心斎が相談を受け、指導しているとのことで、如心斎好み
の遺構とも考えられている。
よってこの霞床の趣向も如心斎のものとなろうが、やはり茶人というのは優れた芸術家でもある
ということであろう。


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