2013年06月27日

岩壁に建つスメラ僧院 #02 建物と岩壁の間の守られた空間  トラブゾン郊外/トルコ


建物の裏側、窪んだ岩壁部分の小広場を見下ろす。
左側が窪んだ岩壁部分で、様々な形状の部屋が岩の形を生かして作り込まれている。右端に
見えている石積みの壁が、岩壁の縁、深い谷間方向に建てられた建物の壁体である。


この岩壁には、もともと風雨をしのげるほどの、自然に出来た大きなくぼみが在ったのであろう。
岩壁の縁に張り出すように建物を作り、裏側は、囲まれた、安全な空間となっている。くぼんだ
側にも大小の部屋が作られており、中央部は、小広場のようになっていて、谷間から吹き上が
る強い風も建物にさえぎられ、ここまでは届かず、比較的快適な空間である。小規模ながら、
ここが僧院として機能していたことは理解できる。水は近くから引いてきていたようである。

これは勝手な想像であるが、ここに僧院を築いた人たちは、イスラム勢力に追われたキリスト教
徒であるという。このあたりは人里から相当離れた山奥であり、めったに人が入って来るような場
所ではないと思われる。
彼らは渓谷の沢伝いに深山に分け入り、ふと見上げた切り立つ断崖絶壁の上部に、大きく窪んだ
部分があることを発見する。崖の上部が庇状に大きくせり出していて、雨風はしのげそうである。
そして、何よりもそこが、天空(神の世界)に最も近く、神々しくも見え、選ばれし特別な場所のよう
に感じられたのだと想像される。
ちなみに、ガイドブックによれば、この僧院は川から300mも切り立った垂直の岩壁の上にある
という。


ラベル:断崖絶壁
posted by pao at 14:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 建築旅日記_トルコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月22日

岩壁に建つスメラ僧院 #01 遠景                トラブゾン郊外/トルコ


ふもとの谷間から岩壁に建つスメラ僧院を見上げる   建物の裏側は、岩壁が大きく窪んで
おり、小広場や岩壁に作られた洞窟状の部屋がある。


スメラ僧院のあるトラブゾンはトルコの北東部、黒海沿岸の街である。気候は一年を通じて
湿潤温暖であるという。
そのためであろう、目にも鮮やかな、緑豊かな所である。日本並みに樹木が多い。
黒海は私が思っていた以上に、青く穏やかで美しい海であった。そして、その海岸沿いの街の
風景も美しく、とても快適で平和そうである。
東方より西方のヨーロッパを目指して旅していると、トルコの東側の隣国、あの砂漠の国イラン
からトルコに入り、最初に目にしたその黒海沿岸の風景は、ひと際美しく印象深いものであった。
ここトルコから少しずつヨーロッパの香りがしだすのである。

スメラ僧院はイスラム勢力に追われたキリスト教徒が隠れ住んだ建物と言われている。
その僧院へはバスでのツアーに参加することにした。バスは、したたるような緑豊かなV字型の
深い谷間の渓谷を登って行く。自然環境は、イランなどの東方(砂漠地域)のものと、明らかに
異なるものである。渓谷を流れる川は、日本の田舎の渓流に近いものである。
バスはパーキングに入り、そこから徒歩で約20分の登り坂であった。その途中から上の絵の
ような、その外観が姿を見せ始める。
ロケイション的には、三仏寺投入堂(鳥取県)のそれと全く同じであるが、こちらの方が規模は大きい。
インパクトの強さ、あるいは、神秘性という点においては、投入堂に軍配が上がると思う。
中国にも似たものがあるというが、人間が考えることは、そう変わらないものだとつくづく思う。


ラベル:断崖絶壁
posted by pao at 17:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 建築旅日記_トルコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月10日

断崖を背にして建つハトシェプスト女王葬祭殿           ルクソール/エジプト


ハトシェプスト女王葬祭殿正面を見る    中央斜路部分に一直線の軸線が見て取れる


この場所には、このハトシェプスト女王葬祭殿(第18王朝、紀元前1501〜1480年頃)とその
すぐ左隣に、ほとんど原形をとどめていないが、メントヘテブU世・V世葬祭殿(第11王朝、
元前2052〜1991年頃)が2つ隣りあって造られている。

この崖を背にした環境(ロケーション)を見た時、率直に心に響いてくるこの場所のパワーのよ
うなものを感じた。つまり、聖域とでも呼べそうなオーラを発しているのである。
高く険しい断崖が屏風のように目の前に立ちはだかり、そしてそれは、緩やかに湾曲しており、
包み込むかのように我々を向い入れてくれる。

このように、自然の環境にいだかれる(包まれる・守られる)というような感覚と同時に、視覚的な
風景として、断崖絶壁がこのように効果的に用いられている例は他にも多く存在する。

日本であれば私が最初に思い付くのは、オーバーハングした崖の窪みに、張り付くように建て
られている、三徳山三仏寺投入堂(鳥取県)であろう。トルコのトラブゾンにある、スメラ僧院
断崖の窪みを利用して、いだかれるように建てられている。
それぞれがみな、風景としてハッと息を呑み込む力を秘めている。

これらの場合、建築物単体の力と、自然物の力がお互いの相乗効果で風景としての魅力を高
め合うことに成功している。これはかなり高度な手法と言えるだろうし、ありのままの自然を活用
するという点で、ある意味エコであり、歓迎されることであろう。

その環境(ロケーション)に神聖なものを感じ取り、平地よりははるかに不便であろうが、この地
と定め、苦労もいとわず、造り込もうとする人間の性質(本性)は、年代と地域を超えて人間に
共通してあるのであろう。あるいは、このハトシェプスト女王葬祭殿のこの効果的な見せ方が
評判となり、長い年月を掛けて広く伝わったとも考えられよう。

そうなのである、ここエジプトは何と言っても歴史が古いのである。物事の起源をたどれば、
ここが源流ではと思わせるものも多い所である。


posted by pao at 08:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 建築旅日記_エジプト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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