2014年06月22日

境界線付近の窓と目隠し――視線・プライバシー・相隣関係について

隣の家や外部からの視線が気になる窓がある場合に、さて、どうしたら良いものかと、
建て主と共に思いを巡らせることがある。

これはマナーやエチケットのようなもので、言わばお互い様の問題でもあり、どうしたら
お隣同士が、お互いに気持ちよく生活できるかという、双方にとって共通の事柄でもあ
るだろう。

これらのことについて、解決策も含めどのように理解しておけばよいのであろうか。
このあたりの事情を一度改めて整理しておきたいと思った。

民法235条の規定に、「境界線から1m未満の距離において他人の宅地を見通すこと
のできる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ)を設ける者は、目隠しを付け
なければならない。」とある。
これは、隣り合う者のどちらかが、この規定に触れていれば、その人が目隠しを付けな
ければならないという意味である。

外部からの視線はカットしつつ、採光や換気が可能な窓に、地窓(床からの低い窓)と
ハイサイド窓(天井付近の窓で、直接は隣の様子が望めないもの)がある。



地窓及びハイサイド窓の例


中でも特にハイサイド窓は、机などの家具の配置を制約せず、空がいつも見え、部屋の
奥まで光が届きやすくなるという特徴がある。
そして、夏場にはハイサイド窓を開くことで、部屋の上部に集まる熱気が自然に排出され、
代わりに地窓を開いておく事で、地表付近の冷たい空気を呼び込む事ができる。
このように自然の原理を活用した換気が可能で、ハイサイド窓は換気の面でも大変効果的
な窓といえる。



ハイサイド窓例/国分寺の家 2階リビング
正面上段:天井の傾斜に合わせたハイサイド窓(右端の縦3枚の窓は換気用のオーニング窓で
オペレーターチェーンにより開閉する)。ハイサイド窓の下、正面中段の出窓には、隣接する住宅
に配慮して既に目隠しが取り付けられている。


一方地窓は、1階であれば地窓付近の地面に光が反射しやすい材料を使用することで、
太陽光を反射させ、その間接光で室内をほんのりと落ち着いた雰囲気に明るくすることが
可能である。
また、地窓付近を植栽することで、日射による地表の温度が上昇することを抑え、涼しい
温度に保つことができれば、上部のハイサイド窓を開くことで、天井付近に集まる熱気が
自然に排出され、そのことで空気の流れが生まれ、代わりに足元の地窓から涼気を取り
込むことが可能となる。

ハイサイド窓は基本的には空しか見えないが、地窓は1階であれば、窓の外のしつらえを
工夫することで、自分好みの窓辺の景色を演出することができる。
例えば、綺麗な石や砂利を敷いたり、草花の鉢を並べたりといったことである。

この地窓的な窓辺のしつらえを、室内から見た時の景色として効果的に用いた例に、江戸
時代の茶人、小堀遠州作と言われている、忘筌(ぼうせん、京都/大徳寺孤篷庵内)という
有名な書院茶室がある。
心地よい風や、光を地面に反射させ室内に取り込む工夫等が見られる、大変見事な広間の
茶室(和室)となっている。
この例からも、地窓はその空間に静かで落ち着いた印象を与える効果があると思われる。



地窓例/孤篷庵忘筌
床前よりこの席の入り口である庭方向を見る。上部の障子戸は西日除けの為でもあろうと考え
られている。


地窓やハイサイド窓は、通常の使用状態において、その窓から隣の宅地を見通すことができ
ない場合は、先の民法の規定には該当しないと考えられる。

また、たとえ1m以上離れていても、お隣が見通せるような窓は、民法上のプライバシー尊重の
主旨から、あまり好ましいとは言えないであろう。

そのような際にも、地窓やハイサイド窓等を検討してみることで、お互いにとっての気持の良い、
うまい解決策が見つかる事も多いのでないかと思われる。


・国分寺の家(PAO建築設計ホームページ)
  http://www2.gol.com/users/paoarchi/asa_jirei-1.html

・忘筌(京都/大徳寺孤篷庵内)について
 古典建築探訪_孤篷庵 #02 書院茶室 忘筌(PAO建築設計ブログ:Pao's Blog)
  http://pao-architects.seesaa.net/category/14139848-1.html


上村 美智夫 / Michio Kamimura
PAO建築設計
 http://www2.gol.com/users/paoarchi/  E-mail paoarchi@gol.com


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2014年06月03日

耐震診断のすすめ――建替えかリフォームか迷ったら

時々相談を受けることのある、建替えにするべきか、それともリフォームの方が良いのかの判断
について、改めて考えてみたいと思う。

これまでは、相談を受け、その都度それぞれの個別の内容で、可能な限り総合的な観点から、
回答していたように思う。

そのような場面で、ベーシックとなる、何か客観的な物差し・判断基準のような、一定の確かさの
ようなものを備えているツールは、無いものだろうかと思う。





相談する側からすれば、リフォームを専門とするようなところに相談すれば、「リフォームでいき
ましょう」等と勧められ、建物の耐久性等にかかわる重要な部分(基礎、土台、柱、屋根等)に多
少の問題があっても、あまり重要視はされず、見える所だけを美しく仕上げて終わるのではないか。
そういう事でその後20年、50年レベルの耐久性は維持できるのだろうかと不安にもなるだろう。

また、一方で新築を得意とするような工務店等では、「柱が傷んでいるので、建替えた方がより
安心できますよ。」等と勧められ、本当は少々の補修で十分なところが、建替えとなったりはしな
いだろうかと、これもやはり心配にもなるだろう。

これらの不安は、私のような建築の設計事務所に相談する場合であっても、概ね似たものでは
ないだろうか。

そこで思い当たったのが、多くの行政で行っている、建物の耐震診断である。

現在では、その診断費用については一般的に多少の補助が期待できる。これらはリフォーム
工事等には直接関係しない、公正中立な、独立した第三者機関の判断と思ってよいだろう。

この耐震診断の結果を見れば、耐震補強(リフォーム)程度で済むのか、あるいは、この際建
替えた方が費用的にも合理的なのか等の判断がある程度は可能になると思われる。
その耐震診断の結果と、自分たちが希望するリフォームの内容をプラスした時に、建替えの方
が良いのかリフォームで済ませた方が良いのかの判断も、おのずと見えてくるのではないだろうか。





耐震診断の結果は、評点という数値で示され、その危険レベルの判定や今後の対策については、
概略以下のように表現されるようである。

評点=1.0以上〜1.5未満 → 一応安全だと思われるが、念のため専門家に診てもらいましょう。
評点=0.7以上〜1.0未満 → やや危険です、専門家による診断を受けてください。
評点=0.7未満        → 倒壊又は大破壊の危険があります、ぜひ専門家と補強について相
                     談してください。

耐震補強の工事とはその低かった評点を、新たに、筋かいの追加等の各種の耐震補強を行うことで、
その結果として、評点を1.0以上まで引き上げることを意味している。もちろん、評点をより高くして、
より高い安全性を求めることも可能であるが、それには更なる工事費の増加を伴う。

まずはこの公正中立な耐震診断の結果を確認して、それをベースにして、建替えかリフォームかを
考えてみるというのが、最も安心できるひとつの方法ではないだろうか。

現在、耐震診断等については、何らかの行政の補助(助成)が用意されているようである。
その補助とは耐震診断の費用の3分の2とか、耐震改修費用の2分の1等ですが、その具体的な
内容は、それぞれの行政で若干の違いがあるようです。

ネット検索で、「○○○市役所 耐震診断 補助」等で情報は容易に見つかると思います。
可能であれば、補助金等も上手に活用したいものである。


リフォーム、増改築についての関連情報
・リフォームについて(PAO建築設計ホームページ)
 リフォームにおける大切なポイントや「住宅の劣化の進行」グラフも掲載しています。
 http://www2.gol.com/users/paoarchi/jilei-reform/jilei-reform.html


PAO建築設計 http://www2.gol.com/users/paoarchi/

posted by pao at 11:30| Comment(0) | TrackBack(0) | お知らせ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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