2013年08月28日

古典建築探訪_三仏寺 投入堂                 東伯郡三朝町/鳥取県


投入堂外観 拝観者が近づけるのは、ほぼこの地点までとなります。


日本の断崖絶壁と建築を考えた時、まずは最初に思い浮かぶのが、この三仏寺投入堂である。

世界の各地にある、断崖絶壁にまつわる建築の中でも、とりわけ質が高いと思う。(もちろん全て
を見たわけではないし、私が日本人であることも、この思いに影響しているとは思われるが。)

それでは、何が他と異なるのか。
自然そのものを主とし、(中心に据え、尊重し)建築はそれに合わせ、従う従の関係で控え目な
点であろう。これは、日本人の根底にある美意識かもしれない。

この絵にもあるように、この崖は左方向に急傾斜で下っているが、右の方向を見れば、自然の
ままの姿の岩肌が建物の床下へと延びて消えている。そして、この絵では分かりづらいが、建
物の屋根の上部から、床下の中に消えていった岩肌が再び現れ、屋根の上に覆いかぶさるよう
に張り出しているのが見て取れる。この間に、特に建物を支える柱の付け根部分は、岩肌を、柱
を立てる為にほんのわずか削り取ったかのような跡が見て取れるが、他はおそらくこの岩肌には、
ほとんど手を加えていないと思われる。柱を安定(固定)させる木製の斜め材の取り付け方も、
この現場の状況に合わせた最小限のものである。

つまり、建物を立てやすいように、自然の岩肌を大きく加工はしていないのである。そして、この
断崖絶壁が本来持っている神聖さを最大限生かして、むしろそのことの方を大切にしているかの
ように建物が作り込まれている点が、他と異なる印象を与える最も大きな要因であろう。

これと似た思いがしたのは、これも美しい自然風景の緩やかな傾斜地に建つ、ラ トゥーレットの
修道院(ル コルビュジエ設計)であった。

この場合も、自然のままの傾斜地の斜面が建物の床下に滑り込み、そのまま中庭を抜け、アプ
ローチの道路がある高い方のレベルへと連続して連なってゆく様子が、見る者に伝わるように巧
みにデザインされている。この美しい自然環境の傾斜地を生かした設計であることが、さり気なく
強調されているのである。
これも、美しい自然の中に後から建物を造り込む時の、ル コルビュジエのひとつの設計姿勢あ
るいは、自然観の現れであろう。

これを見た時、こういったことを考えるのは日本人だけではないのだと、妙に納得もしたし、
コルビュジエがより身近に感じられもし、また、そういったフランスが好きになった事を思い出した。


ホームページでは、主に白黒写真で拝観した時の印象を載せています。→三仏寺/投入堂


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